電子線描画のはじまり

電子線描画とは文字通り電子ビームで絵を描く事です。 電子線は電子顕微鏡で使われている事でわかる通り、非常に細い線です。 この細い線を使って、半導体(コンピュータやあらゆる電化製品を制御している素子)が作られています。

エレクトロニクス産業の発展に伴い、半導体は目覚ましい進歩を遂げました。半導体の性能向上には高速、大容量が不可欠で、IC(集積回路)はどんどん小さくなってきました。
現在のメモリーは約数億個の素子がシリコン(硝子のようなもの)でできた一辺数ミリのの小片(ICチップ)上に描かれています。 20年前は、同じ大きさに今の1万分の1、1万個の素子を載せるのがやっとでした。 それでも、1素子の大きさは数ミクロン(1ミクロンは1mmの1/1000、髪の毛の1/100)でした。
今のところこの様な細い線でもほとんどのの場合、光を用いて作成されています。

では電子ビームはどこに使われているのでしょう。


電子素子
 
ナノマシン部品

リソグラフィ

半導体を作るにはリソグラフィ(石版印刷)とよばれる版画の技法が使われています。

リソグラフィでは平たく削った石の表面にロウやススで絵や字を描きます。この表面を薬品で溶かすと、絵の下の石には薬品が触れず、溶けずに残ります。ロウやススを洗い流したあと、ローラーでインクを塗ると、絵の部分、平たい石の部分にインクがのって、紙に写し取る事ができます。
半導体では、石版を溶かすところまでがおこなわれます。石版の代わりにウェーハとよばれるシリコンに電子回路を描き、薬品などで溶かし、集積回路を作ります。

ウェーハに小さいパターンを描くのには光学写真技術が使われています。
ロウやススの代わりにレジストとよばれる光に反応する物質をつかいます。写真のネガとしてマスクを使用します。 マスクは硝子でできていて、表面に金属膜で電子回路が描かれています。
レジストを塗ったウェーハつまり印画紙の上に、マスクつまりネガを置いて、光をあてると、マスクの金属膜の部分にあたるレジストには光が当たらず、他の部分は感光します。(日光写真や青写真の原理)感光したレジストを現像すると、溶け出して、マスクのパターンがウェーハ上にのこります。(その逆もある)

ウェーハをスパッタ装置などでエッチングするとレジストない部分だけが削られて、回路パターンが作られます。実際はもう少し複雑な作業の繰り返しになります。

フォトマスク作成

さて、半導体製造におけるリソグラフィでネガにあたるマスクは、どうやって作るのでしょう。フォトマスクの作成もリソグラフィです。

まず表面を平面に削った硝子にクロムなどの金属膜をスパッタでつけます。その上にやはりレジストを塗ります。 この上に、回路パターンを書くわけですが、 光を使ってウェーハに転写するためには、マスク上のパターンは 光で描くよりもっと精密に描かれている必要があります。そこで、電子ビームの登場です。

写真のような解像度の高い画像を解像度の低いFAXで送信すろと、きれいに受け取る事ができません。 しかし、元の画像がFAXで受け取ったものであれば、それをさらにFAXするともっと絵が見づらくなてしまいます。 元の画像はなるべく解像度が高いものを使用しないと、転写がうまく行えません。 そこで光より細い線に絞る事のできる電子ビームを使用します。

電子ビーム露光では一度に照らす事のできる部分が非常に小さいため、写真の様に一度に全体を感光する事ができません。 マスク作成では、主に、大きさの違う長方形、正方形や丸のパターンをずらしながら、複雑な線で描かれた回路パターンを 作成します。スタンプで絵を描いたり、十字やカギの文字をつかいワープロで表を書くのと同じです。

ベクタースキャン

電子ビーム描画はマスク以外の分野でも利用されています。
電子線で直接描画する場合には、大きく分けて、ベクタースキャンとラスタースキャンの方式があります。

ベクタースキャンというのは一筆書きで絵を描く方法です。鉛筆の部分が電子ビームになります。
しかし、鉛筆を紙に付けたままでは、描ける絵は限られてしまいます。紙から鉛筆を離すかわりに、電子ビームを 止めます。鉛筆を好きな場所に移動するために手が必要ですが、電子ビーム描画では、電磁石の偏向装置を使います。 コイルに電流を流すと磁界ができます。電子ビームがその中を通ると、曲がります。これを直角に組み合われる事でXY好きな方向に電子ビームを曲げる事ができます。電流を調整する事で磁界の強さがかわり、曲がる量も変わります。

ベクタースキャンで露光を行うには、
電子ビームオフ → 最初の場所にビームを移動 → 電子ビームオン → 移動速度を決めて次の場所に移動 → 電子ビームオフ
を繰り返して複雑なパターンを描いていきます。

磁石に一度付けた金属は磁化してしまいます。偏向コイルも一方向ばかり使用すると電子ビームが元に戻らなく なります。(ヒステリシス)この為、ベクタースキャンでは、方向が均等になるような書き順や、時々全方向の スキャンをおこない、ヒステリシスの影響を取り除く事が必要です。

ラスタースキャン

ラスタースキャンはテレビの走査方式や、SEMの走査方式です。

ラスタースキャンでは一定の方向に繰り返しスキャンが行われるため、 ヒステリシスの影響が小さくて済みます。画像を描くには、このスキャンに合わせて、電子ビームのオンオフをするだけです。 スキャナーで取り込んだ写真なども容易に描画することができます。

1本の線を描くには、ベクタースキャンの方が簡単です。ラスタスキャンでは全面を一通りスキャンしないと例え一本でも線が描けないからです。しかし、例えばマンガの一頁分をベクタースキャンするとなると、線に分解する、ヒステリシスの影響を考慮するなどの前作業が大変です。しかも、線を何本も描くので時間がかかります。それに比べて、ラスタスキャンでは、そのページをスキャンするなどデジタル画像に変換してしまえば、スキャン時間は線1本の時と同じです。

SEMに後付できる描画装置

サンユー電子の取り扱っている電子線描画システムは、半導体を製造するためのものではなく、微細回路、微小光学部品やナノマシンの研究開発を行うためのものです。

電子線発生と偏向は走査式電子顕微鏡そのものでおこなっています。もともと、画像を観察するためにある装置です。言い換えれば、観察用のSEMが描画装置になるわけです。SEMの他に必要なものは、ビームのオンオフを行うブランキング装置、露光量を測定するための電流計、描画パターンをブランキング装置や偏向器におくるパターン発生器とそれらを制御するコンピュータとなります。

ブランキング装置とは、電子ビームを止めるにも偏向器が用いられます。コイルのの先に中心に小さな穴の空いた板を取り付けます。 電磁石に電流を流さなければ、電子ビームは真ん中の穴を通って行きます。 しかし、電流が流れると電子ビームは曲がり、穴をそれて板にあたり、電子ビームは止まってしまします。 同様に、コイルの代わりに電極で電子ビームを曲げる方法もあります。